Kyushu Yamaguchi Children's
Cancer Study Group -KYCCSG-
九州・山口小児がん研究グループ
ごあいさつ
九州・山口小児がん研究グループ(KYCCSG)の歴史と現状、そして未来について
小児がんの中で最も多く経験する急性リンパ球性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia: ALL)を対象とした臨床研究は米国で1962年に開始されました。当時の長期生存率はわずか9%、まさに不治の病でした。さて、現在ではどうでしょうか?もはや90%を超え、ほとんどの患者さんが治る病気になっています。成人を含めた全てのがんの中で最も治療成績が向上したモデルケースとして知られています。このような素晴らしい成果は、一定数の患者さんを登録して行われた臨床研究によってもたらされました。我が国における小児ALLの年間発生数は450例、成人がんの様に1つの施設で治療する機会が非常に少ないため、「多くの施設が一致団結して、患者さんごとに無作為にAもしくはBといういずれかの割り当てられた治療法を試みて、どちらが優れているのか5年程度の研究期間で結論を出す」という手法を基本スタイルとして臨床研究が行われてきました。
日本における多施設参加による小児がん治療のグループ研究は、1972年に当時九州大学小児科に在籍されていた藤本孟男先生によって、この九州で開始され、その後に多くの地域に拡がっていきました。九州では一時グループ研究が途絶えていましたが、1984年に当時九州がんセンター小児科部長だった田坂英子先生を代表として、九州小児がん研究グループが再結成されました。 さらに1990年に山口県の病院が加わって、現在の名称である九州・山口小児がん研究グループ (Kyushu Yamaguchi Children’s Cancer Study Group: KYCCSG)となりました。九州がんセンターの岡村純先生、鹿児島大学の河野嘉文先生が代表を引き継がれて、現在は私が担当させていただいております。
このようなグループによる治療研究を進めながら、わが国の治療成績を国際的にも認めてもらうためには国内でいくつものグループに分かれて研究を続けても限界があると判断し、2002年から我々KYCCSGをふくんだ全国の4つの主要グループが団結して、まさにオールジャパンの日本小児白血病リンパ腫研究グループ(Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group: JPLSG)としての活動が開始しました。10年にわたる努力の結果、2013年からはALLをはじめとしてほぼすべての小児白血病・リンパ腫で全国共通の臨床研究が実施されることになりました。さらに2014年には日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group: JCCG)が設立され、固形腫瘍の臨床研究もオールジャパンで行う体制が整いました。
今後、KYCCSG独自で前方視的に介入を伴う臨床研究を行うことはございませんが、今までKYCCSGで行った臨床研究に登録された患者さんの晩期合併症をふくんだ長期フォローアップやKYCCSG参加施設からのJCCG登録症例の有害事象の検討などをとおして、長年培ってきた顔のみえるグループ内の良好な関係を維持し、九州・山口の患者さんに世界標準の治療を提供できるように努力を続けていきたいと思います。
2021年6月吉日
九州・山口小児がん研究グループ(KYCCSG)代表
宮崎大学医学部小児科 盛武 浩